AさんもBさんも土日の勤務は休日労働ではなく,通常勤務となり,通常の賃金支払いのみで済むはず
|
月 |
火 |
水 |
木 |
金 |
土 |
日 |
A |
休み |
休み |
出勤 |
出勤 |
出勤 |
出勤 |
出勤 |
B |
休み |
出勤 |
休み |
出勤 |
出勤 |
出勤 |
出勤 |
|
店休日 |
|
|
|
|
|
|
就業規則 |
出勤 |
出勤 |
出勤 |
出勤 |
出勤 |
休み |
休み |
就業実態 |
|
|
|
|
|
繁忙期 |
繁忙期 |
CaseⅡ
CaseⅠで
従業員の数が常時10人未満の場合には,週44時間(40条,別表1の14号)
5日間×8時間+週1日は半ドン(4時間)勤務とすることが可能
1年=52.1428・・・週×4時間≒約209時間
209÷8≒26 約1ヶ月間の差が発生する
CaseⅢ
• 週末(あるいは特定の予約が入ったとき)に残業が多い
日 |
月 |
火 |
水 |
木 |
金 |
土 |
11 |
休 |
休 |
8 |
8 |
10 |
10 |
週7時間,月28時間残業
→1週間単位の変形労働時間制を活用する(32条の5)
基本給 |
200,000円 |
1ヶ月の所定労働時間 |
160時間 |
休日労働1.35倍 |
1562.5円/時間 |
月平均の休日労働時間 |
28時間 |
1ヶ月の休日賃金 |
43,750円 |
2年分 |
1,250,000円 |
① 対象となる業種は,小売業,旅館,料理店,飲食店であって
常時30人未満の労働者を使用するもの(労基則12条の5第1項・第2項)
② 労使協定において,1週間の所定労働時間を40時間以内で定め,
これを所轄の労働基準監督署長に届ける
→この制度利用の場合,CaseⅡの1週44時間の特例は利用できない
③ 1日の所定労働時間の上限は10時間毎日の所定労働時間は定められない
但し,当該1週間の開始する前に,各日の労働時間を書面により労働者に通知しなけ
ればならない(32条の5第2項,労基則12条の5第3項)。
違反した場合は,30万円以下の罰金(120条1号)• 1週間単位の変形労働時間制採用後
|
日 |
月 |
火 |
水 |
木 |
金 |
土 |
第一週 |
10 |
休 |
休 |
5 |
5 |
10 |
10 |
第二週 |
5 |
休 |
休 |
5 |
10 |
10 |
10 |
週7時間残業→残業0
CaseⅣ
合意を理由として残業代請求を拒むことができるか。
実際に合意が成立している場合や,入社時から残業代が出ない旨の説明を受けて入社しているよ
うな場合には,従業員も残業代を請求しようとは思わないケースが多い。
しかし,法律上は認められない。裁判例として,ニュース証券事件-東京地裁平成21年1月30日判決
(労基法が強行法規であることを理由)など。
CaseⅤ
就業規則上 始業9時,終業17時30分,休憩1時間
就業実態は終業18時,毎日1人30分の残業従業員数20名
残業代は全て未払い月平均10.5時間のサービス残業とすると,
基本給 |
200,000円 |
1ヶ月の所定労働時間 |
160時間 |
休日労働1.35倍 |
1562.5円/時間 |
月平均の休日労働時間 |
10.5時間 |
1ヶ月の休日賃金 |
16,406円 |
2年分 |
393,744円 |
20人分 |
7,874,880円 |
所定労働時間の見直し
所定労働時間 終業を18時に変更すると残業0になる
CaseⅥ
残業の必要性があると思えない業務量で,社員が生活残業をするのを防ぎたい。
→残業を許可制(事前承認制)にすることが考えられる。
1 使用者が知らないままに労働者が勝手に業務に従事した時間まで労働時間に算入さ
れないし,使用者の具体的な残業禁止命令に反して業務を行った場合にも,労働時間と
解することはできない(神戸学園ミューズ音楽院事件-東京高裁平成17年3月30日判決等)
2 但し,所定の労働時間で終わらない業務量の場合には,黙示の業務命令といえるのではないかと
いう問題がある(かんでんエンジニアリング事件-大阪地裁平成16年10月22日判決)。
CaseⅦ
就業規則 全社一律始業9時・終業18時休憩1時間
しかし,夕方に注文が集中すると月50時間の残業あり
→対策
① 受注の受付時間を早めに締め切る
② シフト制の導入
→ 早番 始業9時,終業18時 遅番 始業11時,終業20時
シフトの割り振りや変更を一方的かつ無制限になし得るか
配転命令の限界に関する東亜ペイント事件-最高裁第二小法廷昭和61年7月14日判決を参考に,
①シフト(又は勤務時間)を限定する個別合意がある場合,
②業務上の必要がない場合,
③他の不当な動機・目的をもってなされたものである場合,
(例えば,労働組合員であることを理由とする場合)
④労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく越える不利益を負わせる場合
(例えば,夜間は労働者による介護を要する親族がいるにもかかわらず,午後10時までのシフトに割り当てる場合)
に当該変更が無効になる。
CaseⅧ
営業社員で直行・直帰は当たり前外回りの時間を合計して残業代請求するのを防ぎたい。
→事業場外のみなし労働時間制(38条の2)
趣旨:事業場外での労働が状態化(外勤営業社員等)していたり,出張等の臨時的な事業場外の労働に従事す
るなどの事情により労働時間の算定が困難となる場合における労働時間算定の便宜を図るため設けられた
要件:労働時間が算定困難であること
→ 事業場外労働であったとしても労働時間の算定が可能である場合には,事業場外みなし労働時間制の適用
はない
労働時間が算定困難であること
昭和63年1月1日基発1号
① 何人かのグループで事業場外労働に従事し,その中に労働時間を管理する者がいる場合,
② 無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら労働している場合,
③ 事業場で訪問先や帰社時刻等,当日の業務の具体的指示を受けた後に,事業場外で指示
どおりに業務に従事し,その後事業場に戻る場合
効果:当該業務の遂行に必要とされる時間労働したものとみなす(38条の2第1項ただし書)
労使協定により定めた労働時間が通常必要時間になる
①対象とする業務,②みなし労働時間,③有効期間,
④時間外労働,⑤休日労働,⑥深夜労働を労使協定で定める。
CaseⅨ
営業職に営業手当を定額残業代の趣旨で支払っている場合
37条の割増賃金を下回らない限り有効(関西ソニー販売事件-大阪地裁昭和63年10月26日判決)
しかし,割増賃金として,労基法所定の金額が支給されているかどうかを判別する必要がある。
割増賃金相当部分とそれ以外の賃金部分を明確に区別できることを要する(国際情報産業事件-東京地裁平成3年8月27日判決など)。
区別が出来ない場合は,37条違反で,残業代を支払う義務がある。
CaseⅩ
プロ野球選手のように年俸制にすれば,残業代を払わなくていいのではないか?
→年俸制それ自体は時間外労働の割増賃金を免れさせる効果はもたず,管理監督者ないし
裁量労働制の要件を満たさない限り,割増賃金支払義務を免れない
(システムワークス事件-大阪地裁平成14年10月25日判決)
CaseⅩⅠ
店長・部長・課長など管理監督者(41条2項)として,残業代を払わなくてよいのでは?
日本マクドナルド事件-東京地裁平成20年1月28日判決で有名になった,名ばかり管理職の問題
① 経営方針の決定や労務管理上の指揮権限を有するなど,その職務内容・責任と権限に照らし経営者と一体的な立場にあるか,
② 出退勤の管理など,その勤務態様からして自己の勤務についての自由裁量性を有するか
③ 管理監督者としてふさわしい待遇を受けているか
を考慮の上,管理監督者該当性が判断され
ている。
CaseⅩⅡ
• 経理部 月締めに経理が集中,月末に残業が多い
• 月末の1週間 10.5時間残業
CaseⅤの表参照
基本給20万円だと,月16406円が残業代,
2年間で393744円×人数分→1ヶ月単位の変形労働制を活用する(32条の2)
① 対象期間を1ヶ月以内とする
② 労使協定・就業規則等に以下の事項を定める
ア 対象期間とその起算日
イ 対象となる労働者の範囲
ウ 対象期間中の各日・各週の労働時間
エ 有効期間
③ 労使協定等を労働基準監督署長に届け出る
• 農産物の取り扱いをしているが,収穫時期の関係で春・秋は忙しいが,夏は暇
• 春・秋の残業代が多いが,夏は仕事がないくらいの状態
→1年以内の期間の変形労働時間制を活用する(32条の4)
但し,1日10時間,1週52時間が限度
① 対象期間は1ヶ月を超え,1年以内
② 労使協定を締結し,以下の事項を定める
ア 対象期間とその起算日
イ 対象となる労働者の範囲
ウ 対象期間中の各日・各週の所定労働時間
エ 有効期間
③ 労使協定を労働基準監督署長に届け出る
④ 就業規則に1年以内の変形労働時間制を採用した旨の記載をし,監督署長へ届け出る
⑤ 変形期間途中の労働者へ賃金精算する
CaseⅩⅣ
HP制作業で,お客さんの関係で,朝早かったり,夜遅かったりする。
始業時間や就業時間を調整できないか。
→フレックスタイム制を活用する(32条の3)労働者が,1ヵ月などの単位期間のなかで一
定時間数労働することを条件として,1日の労働時間を自己の選択する時に開始し,かつ終了できる制度
【メリット】
① 労働者が自律的に出社や退社の時刻を決定し、仕事と個人生活の調和を図りうる
② 通勤ラッシュを避けられる
③ 使用者は,フレキシブルタイム(出退勤のなされるべき時間帯),
コアタイム(労働者が労働しなければならない時間帯)を設定することもできる
労働者は,始業時刻を7時~10時、終業時刻を15時~18時の間で自由に選択できる。
就業規則の変更
• 就業規則の変更は合意があれば可能(労契法9条)
• 合意がなくとも「合理性」があれば可能(労契法10条)
労働問題の解決手段にはどのようなものがあるか
労働問題の解決手段にはどのようなものがあるか
1 労働基準監督署への駆け込み
申告監督(104条1項)
労働基準監督署による是正勧告書,指導票事業所による是正報告書,改善報告書(104条の2第2項)
2 個別労働関係紛争解決促進法に基づく紛争解決
3 内容証明郵便による交渉
4 労働組合
長崎地区労 日本労働組合総評議会(総評)と関係が深い
全国一般長崎地方労働組合 長崎·諫早·佐世保に事務所あり
5 民事調停
簡易裁判所で話し合い
6 労働審判
労働審判法
裁判官と使用者側,労働者側から各1名の計3人により審理
審理回数は原則3回以内労働審判事件の推移
7 民事訴訟
退職労働者に対する賃金不払いについては,退職の翌日からその支払日までの期間について
年14.6%の遅延損害金を付加する(賃金の支払確保に関する法律6条1項,同法施行令1条)。
民事訴訟の場合には,未払金と同一額の付加金の支払請求ができる(114条)。
日本人は本当に働き過ぎか?
ご清聴ありがとうございました。
弁護士法人ユスティティアスタッフ一同
弁護士 森本 精一