胸部には、心臓と心臓を包む心嚢、肺臓とそれを包む胸膜、気管、胸部と腹部を分ける横隔膜があります。
心臓の大きさは握りこぶし程度で、全身に血液を拍手し回収するポンプの働きをしています。
肺は心臓から送られてくる静脈血に新鮮な酸素を与え、代わりに血液中の二酸化炭素を取り動脈血とする、ガス交換の役目を担っています。
五臓六腑のうち、五臓は、心臓・肺・肝臓・腎臓・脾臓で、六腑は、大腸・小腸・胆嚢・胃・三焦・膀胱を意味しています。
このうち、心・肺を除いて他の臓器は、すべて腹部に収まっています。
等級 | 認定基準 |
第1級の2 | 胸腹部臓器に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
第2級の2 | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの |
第1級の2に該当するものは,
重度の胸腹部臓器の障害のために、生命維持に必要な身の回り処理の動作について、常に他人の介護を要するもので、日常生活の範囲が病床に限定されているものです。
第2級の2に該当するものは,
高度の胸腹部の障害のために、生命維持に必要な身の回り処理の動作について、随時介護を要するもので、日常生活の範囲が主として病床にあるが、食事、用便、自宅内の歩行など短時間の離床が可能であるかまたは差し支えのない状態のものです。
等級 | 認定基準 |
第3級の4 | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの |
第5級の3 |
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
第7級の5 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
第7級の13 | 両側の睾丸を失ったもの |
第9級の1 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
第9級の16 | 生殖器に著しい障害を残すもの |
第11級の10 | 胸腹部臓器に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの |
第13級の11 | 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの |
第3級の4に該当するものは,生命維持に必要な身の回り処理の動作は可能であるが、高度の障害のために、終身にわたりおよそ労務につくことができないもので、自宅周囲の歩行が可能かまたは差し支えないが、終身にわたりおよそ労務に服することができない状態のものです。
第5級の3に該当するものは,
身体的能力の低下などのため、独力では一般平均人の 4 分の 1 程度の労働能力しか残されていないものです。
第7級の5に該当するものは,中程度の胸腹部臓器の障害のために、労働能力が一般平均人以下に明らかに低下しているもので、独力では一般平均人の2分の1程度の労働能力しか残されていないものです。
第9級の1に該当するものは,社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるものです。
第11級の10に該当するものは,一般的労働能力は残存しているが、胸腹部臓器の機能の障害が明確であって労働に支障を来たすものです。
動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧の検査結果によって立証する方法と、スパイロメトリー(スパイロメーターを用いて呼吸気量を計測する検査のこと)の結果および呼吸困難の程度によって立証する方法が一般的です。
上記の検査で立証ができないものの、呼吸機能の低下による呼吸困難が認められ、運動負荷試験の結果から、明らかに呼吸機能に障害があると認められるときは、11級が認定されます。
心臓外傷の後遺障害で心臓機能が低下した場合の後遺障害です。
等級 | 認定基準 |
第7級の5 | 除細動器を植え込んだもの |
第9級の11 | おおむね 6METs を超える強度の身体活動が制限されたもの |
第11級の10 | おおむね 8METs を超える強度の身体活動が制限されるもの |
等級 | 認定基準 |
第7級の5 | 除細動器を植え込んだもの |
第9級の11 | ペースメーカを植え込んだもの |
等級 | 認定基準 |
第9級の11 | 房室弁または大動脈弁を置換し、継続的に抗凝血薬療法を行うもの |
第11級の10 |
房室弁または大動脈弁を置換したもので、抗凝血薬療法を受けていないもの |
等級 | 認定基準 |
第11級の10 | 大動脈に偽腔開存型の解離を残すもの |
胸腹部臓器の障害は症状固定後に悪化する可能性が高いと言われています。
したがって、将来の再発を考慮して、先の検査の全てを受け、検査結果を記録として残しておくことが必要です。
等級 | 認定基準 |
第9級の11 | 食道の狭窄による通過障害を残すもの |
「食堂の狭窄による通過障害」とは、次のいずれにも該当するものをいいます。
① 通過障害の自覚症状があること、
② 消化管造影検査により、食堂の狭窄による造影剤のうっ滞が認められること
等級 | 消化吸収障害 | ダンピング症候群 | 胃切除後逆流性食道炎 |
第7級の5 | あり | あり | あり |
第9級の11 | あり | あり | なし |
あり | なし | あり | |
第11級の10 | あり | なし | なし |
なし | あり | なし | |
なし | あり | あり | |
第13級の11 | なし | なし | なし |
「消化吸収障害が認められる」とは、
① 胃の全部を亡失したこと、
② 噴門部又は幽門部を含む胃の一部を喪失し、低体重等(BMI の数値が、体重÷(身長) 2 = 20 以下)が認められること、
のいずれかに該当するものをいいます。
「ダンピング症候群が認められる」とは、
① 胃の全部又は幽門部を含む胃の一部を亡失したこと、
② 食後30分以内に出現するめまい、起立不能等の早期ダンピング症候群に起因する症状又は、食後2時間後から3時間後に出現する全身脱力感、めまいなどの晩期ダンピング症候群に起因する症状が認められること、
のいずれにも該当するものをいいます。
「胃切除後逆流性食道炎が認められる」とは、
① 胃の全部又は幽門部を含む胃の一部を亡失したこと、
② 胸焼け、胸痛、嚥下困難等の胃切除後逆流食道炎に起因する自覚症状があること、
③ 内視鏡検査により食堂にびらん、潰瘍等の胃切除後逆流性食道炎に起因する所見が認められること
のいずれにも該当するものをいいます。
等級 | 認定基準 |
第9級の11 | 残存する空腸及び回腸の長さが100㎝以下となったもの |
第11級の10 |
残存する空腸および回腸の長さが 100 ㎝を超え 300 ㎝未満となったものであって、 消化吸収障害が認められるもの |
等級 | 認定基準 |
第11級の10 |
結腸の全てを切除する等、大腸の殆どを切除したもの |
等級 | 認定基準 |
第5級の3 |
小腸または大腸の内容が漏出することにより、人工肛門の排泄口、 ストマ周辺に著しい皮膚のびらんを生じ、パウチ等の装着ができないもの |
第7級の5 | 人工肛門を造設したもの |
皮膚瘻とは組織の不快部分に形成された膿瘍を原因として皮膚の表面に通じている穴、瘻孔のことです。
等級 | 認定基準 |
第5級の3 | 瘻孔から小腸または大腸の内容の全部または大部分が漏出するもので、パウチ等による維持管理が困難なもの |
第7級の5 |
瘻孔から小腸または大腸の内容の全部または大部分が漏出するもの 瘻孔から漏出する小腸または大腸の内容がおおむね 100ml/ 日以上であってパウチ等による維持管理が困難なもの |
第9級の11 | 瘻孔から漏出する小腸または大腸の内容がおおむね 100ml/ 日以上のもの |
第11級の10 | 瘻孔から少量ではあるが明らかに小腸または大腸の内容が漏出する程度のもの |
等級 | 認定基準 |
第11級の10 | 小腸または大腸に狭さくを残すもの |
小腸の狭さくとは、
① 1ヶ月に1回程度、腹痛、腹部膨満感、嘔気、嘔吐等の症状が認められること、
② 単純X線像においてケルクリングひだ像が認められること
のいずれにも該当するものをいいます。
大腸の狭さく窄とは、
① 1ヶ月に1回程度、腹痛、腹部膨満感等の症状が認められること、
② 単純X線像において、貯留した大量のガスにより結腸膨起像が相当区間認められること
のいずれにも該当するものをいいます。
等級 |
認定基準 |
第9級の11 | 用手摘便を要するもの、 手で掻き出している状況 |
第11級の10 | それ以外のもの |
小腸または大腸に外傷があって、その結果、便秘になったものが対象です。
「便秘」とは、
① 排便反射を支配する神経の損傷がMRI、CT等により確認できること、
② 排便回数が週2回以下の頻度であって、恒常的に硬便であると認められること
のいずれにも該当するものをいいます。
等級 | 認定基準 |
第7級の5 | 完全便失禁 |
第9級の11 | 常時おむつの装着が必要なもの |
第11級の10 | 常時おむつの装着は必要ないものの、明らかに便失禁があると認められるもの |
等級 | 認定基準 |
第9級の11 | ウィルスの持続感染が認められ、かつAST・ALTが持続的に低値を示す肝硬変の場合 |
第11級の10 | ウィルスの持続感染が認められ、かつAST・ALTが持続的に低値を示す慢性肝炎の場 |
等級 | 認定基準 |
第13級の11 | 胆のうを失ったもの |
等級 | 認定基準 |
第9級の11 | 外分泌機能の障害と内分泌機能の障害の両方が認められるもの |
第11級の10 | 外分泌機能または内分泌機能の障害のいずれかが認められるもの |
第12級の13 第14級の9 |
軽微なすい液瘻を残したために皮膚に疼痛等を生じるものは、 「局部の神経症状」として後遺症を認定する。 |
等級 | 認定基準 |
第13級の11 | ひ臓を失ったもの |
等級 | 認定基準 |
第9級の11 |
常時ヘルニアの脱出・膨隆が認められるもの、 または立位でヘルニアの脱出・膨隆が認められるもの |
第11級の10 | 重激な業務に従事した場合等腹圧が強く掛かるときにヘルニアの脱出・膨隆が認められるもの |
GFRの値 | 31 ~ 50ml/ 分 | 51 ~ 70ml/ 分 | 71 ~ 90ml/ 分 | 91ml/ 分 |
腎臓を亡失 | 7級 | 9級 | 11級 | 13級 |
腎臓を失っていない | 9級 | 11級 | 13級 | - |
腎臓の障害は、腎臓の亡失と腎臓を失っていないものに分類、GFRの値(糸球体濾過値)で後遺障害等級を認定します。
GFRの値は、小数点以下を切り上げます。
等級 | 認定基準 |
第5級の3 |
非尿禁制型尿路変更術を行ったが、尿が漏出しストマ周辺に著しい皮膚のびらんを生じ、 パッド等の装着ができないもの |
第7級の5 |
非尿禁制型尿路変更術を行ったもの 禁制型尿リザボアの手術を行ったもの |
第9級の11 | 尿禁制型尿路変更術を行ったもの(禁制型尿リザボアおよび外尿道口形成術を除きます) |
第11級の10 | 外尿道口形成術を行ったもの |
非尿禁制型尿路変更とは、排泄口、ストマから絶えず流れ出る尿を袋、パウチで集尿する手術法です。
禁制型尿リザボアは、腸管を使用して体内に畜尿可能なパウチを作成、失禁防止弁を有する脚を介して腹壁にストマを形成します。
畜尿機能はありますが排尿機能はありません。ストマから自己道尿を必要としますが、パウチの装着は不要です。
等級 | 認定基準 |
第9級の11 | 残尿が 100ml 以上のもの |
第11級の10 |
残尿が 50 ~ 100ml 未満であるもの 尿道狭窄のため、糸状プジーを必要とするもの |
第14級(準用) |
尿道狭窄のため、糸状プジー第 20 番がかろうじて通り、時々拡張術を行う必要のあるもの |
等級 | 認定基準 |
第11級の10 | 頻尿を残すもの |
等級 | 認定基準 |
第7級の5 |
持続性尿失禁を残すもの 切迫性尿失禁または腹圧性尿失禁のため、終日パッド等を装着し、かつ、パッドをしばしば交換するもの |
第9級の11 | 切迫性尿失禁または腹圧性尿失禁のため、常時パッド等を装着しているが、パッドの交換を要しないもの |
第11級の10 | 切迫性尿失禁または腹圧性尿失禁のため、パッドの装着は要しないが下着が少し濡れるもの |
持続性尿失禁とは、排尿にかかわる神経や筋肉の影響により持続性の問題がある場合の尿失禁です。
切迫性失禁とは、尿意を感じ、トイレに行くも我慢できずに漏らしてしまう状態です。
腹圧性尿失禁とは、腹圧が高くなった場合に尿を失禁してしまう状態です。
力を入れた際や、笑う、咳をした際、くしゃみをした際などに失禁してしまいます。
等級 | 認定基準 |
第7級の5 |
両側の睾丸を失ったもの
両側の卵巣を失ったもの |
第9級の11 |
陰茎の大部分を欠損したもの (陰茎を膣に挿入することができないと認められるものに限る) 勃起障害を残すもの 射精障害を残すもの 膣口狭窄を残すもの (陰茎を膣に挿入することができないと認められるものに限る) 両側の卵管の閉鎖または癒着を残すもの、頚管に閉鎖を残すものまたは子宮を失ったもの |
第11級の10 | 狭骨盤または比較的狭骨盤が認められるもの |
第13級の11 |
1 側の睾丸を失ったもの
( 1 側の睾丸の亡失に準ずべき程度の萎縮を含みます) |